宗教新聞について

平成18年1月20日


 高知新港に停泊している地球深部探査船「ちきゅう」の船内を見学した。巨大な石油掘削船と同じ構造で、船の中央に百メートルを越すやぐらが立っている。これで、世界で初めて海底下七千メートルまで掘ってマントルに到達することができる。六個のスクリューを駆使し、GPSによるコンピューター制御で船を定点に留まらせるという▼同船の第一の目的は、巨大地震発生の謎を解くこと。来年秋には東南海沖地震の巣がある紀伊半島沖を掘り、海底下七千メートルの断層からコアを採取する計画だ。第二は、生命の始まりに迫ること。地球の地下深くには高温・高圧・無酸素の原始地球に類似した環境が残っている。第三は、掘り出した地層から地球の過去を探ること。堆積層から数千万年にわたる地球環境の変化が分かる。第四は、地球のシステムを探ること。大陸移動や火山活動などを起こす原動力はマントルの対流。地球の深部での現象を明らかにすることで、地球システムの解明に近づける▼採取したコアは船内の研究室で最初の検査が行われ、次に高知大学農学部内にある海洋研究開発機構高知コア研究所に運ばれる。研究所にはほかの探査船が採取したコアも保存され、世界から地球科学者などが訪れている。研究者にとっては最も貴重な一次資料がここにあるので、「やがてアジアの地球研究のメッカになる」と東亘所長は語っていた。海底探査というと、最近は中国との資源争奪戦が連想されるが、地球や生命の神秘を探るロマンに満ちたものだった。人類のロマンを共有できれば、国々の争いもなくなるだろうに。


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