宗教新聞について

8月5・20日


二百万部を超えたミリオンセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者、片山恭一さんは、同書について「ぼくが描き続けてきた死生観が根本のテーマ」と語っている。
発売当初はそれほど注目されなかったが、急に読まれだしたきっかけの一つは、歌手でタレントの柴咲コウさんが感動した感想文をホームページに書いたこと。
彼女は小説にはない役で、映画に出演している。原作については、「生と死を美しく描いているのが素晴らしい。今は生きていることが実感しにくく、その分、死が付きまとっている感じがするが、希望を見いだすことができた」と語っている。行定勲監督は「三十五歳の私が、これまでで一番実感できた小説」と言う。死は若い世代にとっても関心あるテーマなのだ

▼映画のロケが行われたのは香川県の庵治町。
瀬戸内海に面し、屋島を望む石の町。
映画を見たカップルたちがロケ地を訪れ、大声で「愛を叫んで」いるという。天地子の息子が通っている高校の生徒がエキストラでたくさん出演しているので、彼も見たらしい。
感想を聞くと、「家族で見ると暗くなるよ」と言っていた。たしかに重いテーマではある

▼片山さんの話を続けると、「かつて死後の世界は豊かなイメージの中で描かれてきました。
死後を意味づける智恵を共有していたのです。今は死は虚無以外の何ものでもなくなっています。
死が空しく悲惨なものならば、生きていくこともそうならざるをえません。
…死を豊かにし、意味のあるものにしていかなければ、不全感のある生き方から解放されないのではないでしょうか」
▼今はお盆の季節。亡くなった先祖が帰ってくるという伝統行事の意味を問いながら、久しぶりに集まる家族や親族のことを思い、何よりも今の生を充実させたい。

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