宗教新聞について

平成17年5月5日

この四月九日、坂出市にある瀬戸大橋記念公園横に香川県立東山魁夷せとうち美術館がオープンした。画伯の祖父が坂出市櫃石(ひついし)島の出身だったことから、遺族より版画作品二百七十点余の寄贈を受けた県が設立したもの。五月二十二日まで、開館記念展「東山魁夷?『風景画家としての旅立ち』」が催されている▼開館に際し、すみ夫人は「長いドイツ留学を終え、帰航の船旅で、瀬戸の内海に船が近づくと、緑豊かな周辺の風光を眺め、身も心も洗われる清浄感を味わったと申します。横浜で生まれ、少年・青年時代を神戸で過ごした東山にとって、海こそが、その後の人生を支える原動力となったと思います」との言葉を寄せている。東京美術学校卒業後、ドイツに留学。偉大な画家たちの絵に圧倒されながらも、風景画家としての光明を見いだしての帰国だったという▼瀬戸内海に面した美術館の壁面は海の青。唐招提寺御影堂の障壁画に描かれた海の色だった。画伯は、鑑真和上が思い描いたであろう日本の美しい風景を再現しようとした。光を失いながらも日本のために尽くされた和上への供養の思いからではないか▼印象に残ったのは「郷愁」と題された作品。緑の田んぼの中を川が流れ、遠くに橋があり、山がかすんで見える。どこにでもあるような風景だが、震えるような懐かしさに襲われた。「風景は祈り」という、画伯の声が聞こえたような気がした。


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